「給料は変わらないのに、生活が苦しくなった気がする」。2026年7月時点、そう感じている会社員の方は少なくないでしょう。
この背景には、物価高による実質賃金の低下があります。実質賃金とは、額面の給料から物価の変動分を差し引いた、実際の購買力を表す指標です。
この記事では、インフレで現金が目減りする仕組みをやさしく整理し、固定費の見直し・生活防衛資金の確保・資産形成という3つの順番で家計を守る考え方をご紹介します。
なぜ物価高で家計が苦しくなるのか
給料の額面が変わらなくても、物価が上がれば実質的な生活水準は下がります。まずはこの仕組みを整理しましょう。
物価高(インフレ)とは何か
インフレ(インフレーション)とは、モノやサービスの値段が全体として継続的に上がっていくことです。
総務省統計局によると、2026年5月分の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)は、前年同月比1.4%の上昇となりました(出典: 総務省統計局「消費者物価指数」2026年6月19日公表、https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/index-z.html)。
総合指数でも前年同月比1.5%の上昇となっており、日常的な買い物で値上がりを感じる方が多いのも自然なことといえます。
実質賃金とは何か
実質賃金とは、名目賃金(額面の給料)から物価の変動分を差し引いた、実際に使える購買力を表す指標です。
たとえば年収500万円の方の給料が1年で1%増えたとしても、物価が2%上がっていれば、実質的には目減りしている計算になります。
厚生労働省の毎月勤労統計調査(2026年4月分速報)によると、実質賃金は前年同月比1.9%増となり、4か月連続でプラスになったとされています(出典: 厚生労働省「毎月勤労統計調査」、https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/r08/2604p/2604p.html)。
一方で、同じ速報によると名目賃金(現金給与総額)は前年同月比3.5%増とされており、額面の伸びに比べると物価上昇の影響で実感が伴いにくい面もあるようです。最新の数値は公表元でご確認ください。
現金だけで持つと目減りするとはどういうことか
普通預金の金利は金融機関によって差がありますが、0.001%〜0.2%程度の水準にとどまることが多いとされています。
仮に物価上昇率が年1%台で推移し、預金金利がそれを下回る状態が続くと、現金の額面は変わらなくても、買えるモノの量は少しずつ減っていく計算になります。
これが「現金だけで持つと目減りする」といわれる理由です。生活に必要なお金をすべて投資に回すべきという意味ではなく、まず仕組みを知ることが第一歩になります。

家計防衛は3つの順番で考える
物価高への対応というと、投資や資産形成が真っ先に思い浮かぶかもしれません。ただし、順番を間違えると家計がかえって不安定になることがあります。
家計防衛は「①固定費を締める→②生活防衛資金を確保する→③残りをインフレに強い形で置く」の順番で考えることをおすすめします。
まず支出の土台を固め、次に不測の事態に備えるお金を確保し、その上で余裕資金の置き方を検討する、という流れです。焦って③から手をつけると、必要なときに手元資金が足りなくなるリスクがあります。

①固定費を見直して支出を締める
固定費の見直しは、一度実施すれば効果が続きやすく、家計防衛の中でも着手しやすい一歩です。
見直し優先度が高い項目
通信費・保険・サブスクリプション・光熱費・住居費は、見直しの効果が出やすい代表的な項目です。
特に通信費やサブスクは契約内容を変えるだけで済むことが多く、比較的取り組みやすい傾向があります。
どこから手をつけるか
すべてを一度に見直そうとすると挫折しやすいため、効果が大きく手間が小さいものから着手するのが現実的です。
固定費の見直し方については、以下の記事で具体的な手順を紹介しています。
特に光熱費は電力・ガスの自由化により選択肢が増えています。詳しくは以下も参考にしてください。
②生活防衛資金は現金のまま確保する
生活防衛資金は、インフレが進んでいる局面でも現金や預金で持つことが基本とされています。
生活防衛資金とは
生活防衛資金とは、急な失業や病気、収入減など、いざというときに生活費を賄うために備えておく現金のことです。
なぜインフレ下でも現金で持つのか
値動きのある資産(株式など)で持っていると、いざ必要になったタイミングで価値が下がっている可能性があります。
生活防衛資金については、物価による目減りのリスクよりも、必要なときにすぐ取り崩せる安全性を優先する考え方が一般的です。
金額の目安
生活費の3〜6か月分が目安といわれることが多いですが、家族構成や雇用形態、収入の安定性によって必要な金額には幅があります。
ご自身の状況に応じた目安の考え方は、以下の記事で詳しく解説しています。
③残りのお金をインフレに強い形で考える
ここから先は、特定の金融商品を勧めるものではなく、インフレに対する選択肢の「型」を中立的に整理するものです。
固定費の見直しと生活防衛資金の確保ができた上で、余裕資金がある場合に検討する内容として読んでいただければと思います。
現金・預金
安全性は高い一方、インフレが続く局面では実質的な価値が目減りしやすいという特徴があります。
株式(インデックス投資など)
インデックス投資とは、特定の株価指数に連動する運用成果を目指す投資信託などを通じて、多くの企業に分散して投資する方法です。
長期的な視点で分散して投資することが基本的な考え方とされていますが、値動きがあり元本が保証されているわけではありません。
新NISA(少額投資非課税制度)という、投資で得た利益が非課税になる制度もあります。金融庁によると、つみたて投資枠は年間120万円、成長投資枠は年間240万円で、併用すると年間最大360万円まで投資でき、非課税で保有できる上限額は生涯で1,800万円とされています(出典: 金融庁「新しいNISA」2026年7月時点、https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/know/)。
インデックス投資の始め方や銘柄選びの考え方は、以下の記事で解説しています。
債券(個人向け国債 変動10年など)
個人向け国債の変動10年とは、半年ごとに適用金利が見直され、市場金利の動きに応じて利息が変わる、国が発行する債券です。
財務省によると、金利が大きく下がった場合でも年0.05%の最低金利が保証される仕組みになっています(出典: 財務省「個人向け国債」2026年7月時点、https://www.mof.go.jp/jgbs/individual/kojinmuke/main/outline/hendou/)。
値動きの安定性を重視する場合の選択肢の一つとして挙げられることがあります。
実物資産(不動産・金など)
インフレに強いとされることがある一方、換金のしやすさ(流動性)や価格変動のリスクにも留意が必要です。
どの資産にも一長一短があり、どれが正解というものではありません。ご自身の状況や考え方に応じて検討してください。
インフレ対策でやりがちな失敗と注意点
家計防衛を進める中で、次のような落とし穴には注意が必要です。
- 焦って生活防衛資金まで投資に回してしまう
- よく分からない高いリターンをうたう商品に飛びつく
- 固定費の見直しを後回しにして、いきなり資産形成から始めてしまう
特に、生活防衛資金を取り崩して値動きのある商品に回すのは、本来の目的からずれてしまう典型的なパターンです。
判断に迷う場合は、ファイナンシャルプランナーなど専門家に相談するのも一つの方法です。
今日から始められる第一歩
大きく動く前に、まずは現状を把握することから始めましょう。
- 固定費のうち1つだけでも契約内容を確認してみる
- 家計の支出と貯蓄額を紙やアプリに書き出してみる
- 生活防衛資金として使える現金が今いくらあるかを確認する
小さな一歩からで構いません。全部を一度にやろうとせず、できることから着手することが継続のコツです。
よくある質問
貯金だけではダメですか
生活防衛資金は現金で持つことが基本とされています。それを超える余裕資金については、インフレに強い資産の考え方も選択肢の一つになります。
物価高はいつまで続きますか
将来の物価動向を断定することはできません。日本銀行は2013年から2%の「物価安定の目標」を掲げて金融政策を運営しています(出典: 日本銀行「物価安定の目標」https://www.boj.or.jp/mopo/outline/target.htm)。
最新の動向は、日本銀行や総務省統計局が公表する資料で確認することをおすすめします。
何から始めればいいですか
まずは固定費の見直しなど、すぐに着手できることから始めるのがおすすめです。現状把握だけでも家計防衛の第一歩になります。
インフレに強い資産は必ず増えますか
株式や実物資産には値動きがあり、必ず増えるとは言えません。ご自身の状況に応じて、無理のない範囲で検討することが大切です。
まとめ
物価高が続く中では、①固定費を締める→②生活防衛資金を確保する→③残りをインフレに強い形で置く、という3つの順番で家計を見直すことが大切です。
まずは固定費の見直しなど、今日からできることから始めてみましょう。生活防衛資金を確保した上で、余裕資金の置き方はご自身のペースで検討していけば十分です。
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