自己都合・会社都合の違いと2025年改正|失業保険(基本手当)完全ガイド【2026年版】

退職届と書類を前に失業保険(基本手当)の手続きを確認する会社員のイラスト

「退職したら失業保険をもらえるはず」と思いながらも、「自己都合だと損なのか」「2025年に制度が変わったと聞いたけど何が違うのか」と疑問を感じている方は多いのではないでしょうか。

失業保険(正式名称: 基本手当)は、退職後の生活を支える雇用保険の中核制度です。ただし自己都合と会社都合では給付制限・給付日数・受給額が大きく異なり、2025年4月の改正で給付制限期間が原則1か月に短縮されています。

本記事では、2026年4月時点の制度に基づき、自己都合と会社都合の3点比較・2025年改正の正確な適用条件・計算方法と申請手順までを、ハローワーク・厚生労働省の一次情報をもとに整理します。退職を検討中の方も、すでに退職した方も、まずここを読んでから次の一歩を確認してください。

※ 本記事は2026年4月時点の情報に基づいています。制度改正等によって内容が変わる場合があります。個別の判断についてはハローワークでご確認ください。

目次 閉じる

  1. 失業保険(基本手当)とは — 雇用保険の基本と受給要件
  2. 自己都合と会社都合の違い — 給付制限・所定給付日数・被保険者期間の3点比較
  3. 2025年改正のポイント — 給付制限「2か月→1か月」の適用条件を正確に理解する
  4. 基本手当はいくらもらえるか — 賃金日額・給付率の計算方法と年収別目安
  5. ハローワークへの申請手順 — 離職票提出から初回入金までのタイムライン
  6. 受給中の注意点 — 求職活動実績・アルバイト申告・傷病手当金との同時受給
  7. よくある質問
  8. まとめ — 退職前・退職後に確認しておきたい失業保険チェックリスト

失業保険(基本手当)とは — 雇用保険の基本と受給要件

失業保険は俗称で、正式には「基本手当」といいます。雇用保険の「求職者給付」の一種で、会社員(雇用保険の被保険者)が離職した際に再就職までの生活を支える給付です。

基本手当を受給できる人の3要件

ハローワーク公式によると、基本手当を受給するには次の3つを満たす必要があります(出典: ハローワーク「基本手当について」 https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_basicbenefit.html )。

  1. 雇用保険の被保険者期間を満たしていること(一般: 離職前2年間に12か月以上/会社都合等の特定受給資格者・特定理由離職者: 離職前1年間に6か月以上)
  2. 「失業の状態」にあること(働く意志と能力があり、積極的に求職活動を行っているにもかかわらず、職業に就けない状態)
  3. ハローワークに求職の申込みをしていること

ここで誤解しやすいのが2点目の「失業の状態」です。病気・ケガ・妊娠・出産などで就労できない状態は「働く能力がある」とは扱われず、基本手当の支給対象外となります。この場合は別途「受給期間延長申請」を行う必要があります(後述)。

受給できない主なケース

次のような場合は基本手当の対象外、または保留となります。

  • 退職時点で再就職の内定がある
  • 自営業の開業準備が進んでいる
  • 雇用保険の被保険者期間が不足している
  • 病気・ケガで当面働ける状態ではない

公的保障の全体像については会社員に本当に必要な保険を3ステップで見極めるもあわせてご確認ください。

自己都合と会社都合の違い — 給付制限・所定給付日数・被保険者期間の3点比較

最も差が出るのは、給付制限の有無・所定給付日数・被保険者期間要件の3点です。

自己都合と会社都合の3点比較表

給付制限の差 — 実生活への影響が一番大きい

給付制限とは、待期期間(7日間)の経過後にさらに設けられる「受給を待つ期間」のことです。

  • 自己都合(一般離職者): 原則1か月の給付制限あり(2025年4月1日以降の退職/詳細は次項)
  • 会社都合(特定受給資格者): 給付制限なし(待期7日経過後すぐ受給対象)

つまり会社都合のほうが、初回振込までの期間が大きく短くなります。

所定給付日数の差 — 長期間の累計差はここで生まれる

所定給付日数とは、基本手当が支給される最大日数のことで、年齢・被保険者期間・離職理由で決まります(出典: ハローワーク「基本手当の所定給付日数」 https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_benefitdays.html )。

  • 一般離職者(自己都合等): 90〜150日(被保険者期間によって変動。10年未満は90日、10年以上20年未満は120日、20年以上は150日が目安)
  • 特定受給資格者(会社都合等): 年齢・期間によって最大330日(45歳以上60歳未満で被保険者期間20年以上が上限ケース)
  • 就職困難者(障害者等): 最大360日

会社都合と自己都合では、長期勤続後の差がとくに大きくなる点に注意が必要です。

「特定理由離職者」とは — やむを得ない自己都合は別扱い

退職理由が形式上は自己都合でも、正当な理由がある場合は「特定理由離職者」に該当する余地があります。

該当しうる例として、心身の不調による退職、家族の介護・看護のための退職、配偶者の転勤に伴う退職、ハラスメントによる退職などが挙げられます。特定理由離職者と認められると、給付日数が特定受給資格者と同水準まで広がる場合があります。

ただし、この区分はハローワークが離職票の記載内容と事実確認に基づいて決定します。読者の側で「自分は特定理由離職者だ」と確定的に判断することはできない点にご注意ください。健康上の理由で退職する場合の傷病手当金との関係は傷病手当金 退職後も受け取る条件と3つの盲点で整理しています。

2025年改正のポイント — 給付制限「2か月→1か月」の適用条件を正確に理解する

2025年4月の改正で給付制限期間が原則1か月に短縮されました。ただし「全員が1か月になった」わけではない点が、誤解されやすいポイントです。

原則1か月が適用される条件 — 退職日が起点

給付制限が原則1か月に短縮されるのは、退職日(離職日)が2025年(令和7年)4月1日以降の方に限られます。2025年3月31日以前に退職した方は、従来どおり原則2か月の給付制限が適用されます(出典: 厚生労働省「令和7年4月以降に教育訓練等を受ける場合、給付制限が解除され、基本手当を受給できます」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000160564_00045.html )。

改正は遡及せず、施行日後の退職にのみ適用される点をまず押さえておきましょう。

3か月になる例外 — 5年以内に2回以上の自己都合退職

ただし、退職日から遡って5年以内に2回以上、正当な理由のない自己都合退職で受給資格決定を受けたことがある場合は、給付制限が3か月になります。

「短期間に転退職を繰り返している方」が3か月のままになる、と理解しておくと整理しやすいです。改正によって給付制限がなくなったわけではない点に注意してください。

給付制限が解除されるケース — 教育訓練の受講

2025年4月以降、対象となる教育訓練を受講する場合は給付制限自体が解除され、待期7日経過後から基本手当を受給できる仕組みも導入されています。

解除の対象となるのは次のようなケースです(厚労省同上ページ)。

  • 離職前1年以内に対象の教育訓練を受講していた
  • 離職後に対象の教育訓練を受講開始する

対象訓練は、教育訓練給付金の対象訓練・公共職業訓練・短期訓練受講費の対象訓練など、職業安定局長が指定するものに限られます。受講開始が2025年4月1日以降であることが要件で、過去の受講実績のみでは解除されない場合があります。詳細はハローワークで個別に確認することを推奨します。

なお参考として、2025年10月施行の「教育訓練休暇給付金」は、在職中に休職して教育訓練を受ける場合に基本手当相当を支給する新制度です。本記事では概要紹介に留め、詳細は厚労省公式ページをご確認ください。

基本手当はいくらもらえるか — 賃金日額・給付率の計算方法と年収別目安

基本手当の金額は、3ステップで計算されます。

ステップ1: 賃金日額を出す

賃金日額は、離職前6か月の賃金合計を180で割った金額です。賃金には基本給に加えて通勤手当・残業代・諸手当が含まれますが、賞与(ボーナス)は含まれない点が一般的です。

ステップ2: 給付率を掛ける

賃金日額に給付率を掛けたものが基本手当日額です。給付率は45〜80%の範囲で、賃金日額が低いほど給付率が高くなる「逓減構造」になっています。低賃金層ほど保護が厚くなるよう設計されており、高賃金層は給付率が下がります。

ステップ3: 上限額と比較する

ステップ2の計算値が上限額を超える場合は、上限額が基本手当日額となります。基本手当日額の上限額は毎年8月1日に改定されます。2025年8月1日改定後の上限額は次のとおりです(出典: ハローワーク「基本手当について」、 厚生労働省「雇用保険の基本手当日額の変更」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_59748.html )。

  • 30歳未満: 7,255円
  • 30歳以上45歳未満: 8,055円
  • 45歳以上60歳未満: 8,870円
  • 60歳以上65歳未満: 7,623円

上限額は2026年8月以降に改定される可能性があります。最新の数値はハローワーク公式サイトでご確認ください。

年収別の月額換算目安(あくまで参考値)

実際の支給額イメージを掴むための一例として、年収400万円・500万円・600万円のケースを試算します。

  • 年収400万円(月収約33万円): 賃金日額11,000円程度、給付率約60%適用で日額6,600円前後 → 月額換算で約20万円
  • 年収500万円(月収約42万円): 賃金日額13,800円程度、給付率約55%適用で日額7,500円前後 → 月額換算で約23万円
  • 年収600万円(月収約50万円): 賃金日額16,500円程度だが、年齢区分の上限額が適用されるケース(30〜45歳なら日額8,055円) → 月額換算で約24万円

上記はあくまで目安の試算です。実際の支給額は離職前6か月の具体的な賃金構成、基本手当日額の上限額、所定給付日数等によって個人差があります。正確な金額はハローワークにてご確認ください。

ハローワークへの申請手順 — 離職票提出から初回入金までのタイムライン

退職後の流れを把握しておくと、必要書類の準備や生活費の見通しが立てやすくなります。

退職から初回入金までのタイムライン(自己都合・会社都合の比較)

申請に必要な書類

ハローワークでの求職申込みに必要な書類は以下です(出典: ハローワーク「雇用保険の具体的な手続き」 https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_procedure.html )。

  • 離職票-1・離職票-2(退職後に会社から届きます)
  • マイナンバーカード(または個人番号確認書類+身元確認書類)
  • 写真2枚(縦3cm×横2.5cm)
  • 本人名義の預金通帳またはキャッシュカード

離職票がなかなか届かない場合は、まず退職した会社に問い合わせ、それでも進まない場合は会社の管轄ハローワークに相談する流れになります。

受給資格決定から初回入金までのステップ

申請から初回振込までのおおまかな流れは次のとおりです。

  1. 離職票を持ってハローワーク来所・求職の申込み
  2. 受給資格決定(待期期間7日のスタート)
  3. 雇用保険受給者初回説明会への参加
  4. 初回の失業認定日(受給資格決定から約4週間後が目安)
  5. 認定後概ね5営業日程度で初回振込

これを退職理由別に時間軸で見ると、次のようになります。

  • 自己都合(2025年4月1日以降の退職): 待期7日 → 給付制限1か月 → 失業認定日 → 初回振込/退職から初回振込まで概ね6〜8週間が目安
  • 会社都合(特定受給資格者): 待期7日 → 失業認定日 → 初回振込/退職から初回振込まで概ね3〜4週間が目安

実際の日程は、最初の来所日や認定日設定によって個人差があります。正確なスケジュールはハローワークでご確認ください。

受給期間の上限 — 原則1年以内

基本手当を受け取れる「受給期間」は、原則として離職翌日から1年以内です。所定給付日数が残っていても、この期間を過ぎると受給できなくなります。

ただし、病気・ケガ・妊娠・出産・育児・介護等で30日以上働けない場合は、受給期間を最長3年延長できる「受給期間延長申請」の制度があります。療養中などで申請が遅れそうな場合は、ハローワークへの相談を早めに済ませておくと安心です。

受給中の注意点 — 求職活動実績・アルバイト申告・傷病手当金との同時受給

基本手当は受給がスタートしたら自動的に振り込まれ続けるわけではなく、いくつかの義務と注意点があります。

28日ごとの認定日に求職活動実績が必要

4週間ごとの失業認定日には、原則として2回以上の求職活動実績の申告が必要です。求職活動として認められるのは、求人への応募、ハローワークでの就職相談、職業訓練の受講、再就職に資するセミナーへの参加などです。

実績が不足すると「不認定」となり、その期間分の基本手当は支給されません。形式的な申告ではなく、実際に再就職に向けた活動を行っていることが求められます。

アルバイト・副業の扱い — 必ず申告する

受給中にアルバイトや副業で収入を得た場合は、必ずハローワークに申告する必要があります(申告義務)。申告を怠ると「不正受給」と判定され、返還命令や3倍返し(受給額+2倍の納付命令)の対象になり得ます。

また、週20時間以上または31日以上継続する見込みの労働は「就職」と扱われる場合があり、給付の打ち切り・減額の対象になることがあります。具体的な就労条件については、開始前にハローワークへ事前確認することを推奨します。

傷病手当金との同時受給は不可

健康保険の「傷病手当金」と雇用保険の「基本手当(失業保険)」は、同時に受け取ることができません。

理由は、基本手当の受給要件が「働く意志と能力があるが就職できていない状態」であるのに対し、傷病手当金は「病気・ケガで就労できない状態」を前提とするためです。両者は前提条件が両立しません。

退職後に療養が必要な状態が続いている場合は、まず受給期間延長申請をハローワークに届け出て、療養が終わってから求職活動を開始するルートが現実的です。詳細は傷病手当金 退職後も受け取る条件と3つの盲点も合わせてご確認ください。長期療養で収入途絶リスクが見えてきた場合の民間保険による補完は就業不能保険は会社員に必要かで整理しています。

なお退職後は、会社の健康保険・厚生年金から、国民健康保険・国民年金(または家族の健康保険の被扶養者・任意継続)に切り替える手続きも必要になります。基本手当の手続きと並行して、市区町村役場・年金事務所での手続きも忘れずに進めておきましょう。

よくある質問

Q1. 2025年4月改正の「1か月制限」が適用されるのは、いつ退職した人ですか

退職日(離職日)が2025年(令和7年)4月1日以降の方が対象です。2025年3月31日以前に退職した方は、従来どおり原則2か月の給付制限が適用されます。

なお、退職日から遡って5年以内に2回以上、正当な理由のない自己都合退職で受給資格決定を受けたことがある場合は、給付制限が3か月になります(出典: 厚生労働省)。

Q2. 傷病手当金を受給中に退職した場合、失業保険はすぐに申請できますか

傷病手当金と基本手当は同時に受給できません。病気・ケガで就労できない状態は基本手当の「失業状態」の要件を満たさないためです。

療養が長引く見込みの場合は、離職後すぐにハローワークへ「受給期間延長申請」を届け出ておくことで、療養終了後に基本手当の受給資格を確保できる可能性があります。具体的な手続きは、傷病手当金の解説記事(傷病手当金 退職後も受け取る条件と3つの盲点)もあわせてご確認ください。

Q3. 会社都合か自己都合かは自分で選べますか

離職理由の区分は、ハローワークが離職票の記載内容と事実確認に基づいて決定するもので、退職者側が任意に選ぶことはできません。

ただし、離職票の記載内容に事実と異なる点がある場合は、ハローワークへ申し立てることが可能です。整理解雇・賃金不払い・ハラスメントなど、会社都合に該当しうる事情がある場合は、関連する記録(就業規則、メール、給与明細など)を保管したうえで、ハローワークの窓口で相談することをおすすめします。

まとめ — 退職前・退職後に確認しておきたい失業保険チェックリスト

最後に、失業保険を活用するために事前・事後に確認しておきたい項目を整理します。

  • [ ] 雇用保険の被保険者期間を確認した(給与明細や雇用保険被保険者証で確認可能)
  • [ ] 退職理由(自己都合 / 会社都合 / 特定理由離職者の可能性)を整理した
  • [ ] 退職日が2025年4月1日以降かを確認した(給付制限1か月/2か月の分岐点)
  • [ ] 過去5年以内に自己都合退職での受給歴が2回以上あるかを確認した(3か月例外の判定)
  • [ ] 離職票が会社から届くか/届かない場合の問い合わせ先を把握した
  • [ ] 病気・ケガ等で就労できない期間がある場合は受給期間延長申請の検討を済ませた
  • [ ] 必要書類(マイナンバーカード・写真・通帳)を揃えた
  • [ ] 受給中のアルバイト・副業収入は必ず申告すると把握した
  • [ ] 傷病手当金との同時受給ができない点を理解した

失業保険は「いつから・いくら・どのくらいの期間もらえるか」が個別の状況によって大きく異なる制度です。離職票が手元に揃ったら、まずはお近くのハローワークで受給資格決定の手続きを進め、自分のケースに即した正確な情報を得ることをおすすめします。

雇用保険の他の給付について確認したい方は、育休中の社会保険料免除と育児休業給付金もあわせてご確認ください。


本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の購入・売却・保有を推奨するものではありません。また、税制・社会保障制度は改正される場合があり、記載内容は執筆時点のものです。最新の情報や個別の取扱いについては、厚生労働省ハローワークインターネットサービス などの公式サイト、または社会保険労務士・ファイナンシャルプランナー等の専門家にご確認ください。

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