※ 本記事は2026年4月時点の制度・税制に基づいて執筆しています。制度は改正される場合があります。最新情報は金融庁・国税庁の公式サイトをご確認ください。
NISAのつみたて投資枠でインデックスファンドを積み立てている方の中には、「成長投資枠はどう使えばいいのだろう」と感じている方も多いのではないでしょうか。
「配当金が毎月・毎四半期に入ってくれば、生活にゆとりが出る」という動機はごく自然なものです。一方で、高配当株投資には税の仕組みや銘柄選びに関して、見落としやすいポイントもあります。
本記事では、インデックス投資をすでに始めている会社員の方を対象に、NISA成長投資枠を高配当株・高配当ETFに活用する際の考え方を整理します。制度の仕組みと確認ポイントを把握することで、判断の根拠を持てるようになります。なお、成長投資枠全体の仕組みや使い方の選択肢については新NISA成長投資枠の使い方ガイドで体系的に解説しています。
投資には元本割れのリスクがあります。ご自身のリスク許容度に応じて判断してください。
NISA成長投資枠で高配当株を選ぶ前に確認すること
まず「成長投資枠で何が買えるか」を整理するところから始めましょう。ここを把握しておくと、銘柄選びの段階で余計な手戻りが防げます。

年間240万円・生涯1,200万円の枠をどう考えるか
新NISAでは、つみたて投資枠(年間120万円)と成長投資枠(年間240万円)を同時に使えます。合算で年間360万円まで非課税投資が可能です(2026年4月時点、出典:金融庁 新NISA概要)。
生涯の非課税保有限度額は総額1,800万円で、そのうち成長投資枠は最大1,200万円という上限構造です。残り600万円分はつみたて投資枠にのみ使えます。
「まずつみたて投資枠を埋めてから、成長投資枠を使う」という考え方は多くの方が採用していますが、どちらを優先するかはご自身の目的と状況によって変わります。一つの考え方として参考にしてください。
成長投資枠の対象外銘柄に注意
成長投資枠でも購入できない商品があります。主な対象外はつぎの通りです。
- 整理銘柄・監理銘柄(上場廃止の恐れがある銘柄)
- 信託期間が20年未満の投資信託
- 毎月分配型の投資信託・ETF
- 高レバレッジ型(特定デリバティブ型)の商品
購入前に投資信託協会(旧称:資産運用業協会)の成長投資枠対象商品リストを確認する習慣をつけておくと安心です。リストは随時更新されています。
高配当株投資が会社員のキャッシュフローに合う理由と合わない理由
高配当株が「会社員に向く」と言われる背景には、配当金という定期的なキャッシュフローの存在があります。しかし、向く面・向かない面の両方を把握しておくことが大切です。
配当金は「不労所得」ではなく「事業利益の分配」
配当金は企業が当期純利益の中から株主に分配するものです。業績が悪化すれば、企業は配当を減らす(減配)または停止する(無配)場合があります。
「配当性向」(配当性向 = 配当金 ÷ 当期純利益 × 100)は、企業が利益のどれだけを配当に充てているかを示す指標です。配当性向が著しく高い場合、業績が少し落ちただけで配当維持が難しくなるリスクがあります。
連続増配を続けている企業は安定感の目安として注目されますが、過去の実績が将来を保証するものではありません。企業のIR情報や業績動向をあわせて確認することが大切とされています(出典:J-FLEC 高配当株の留意点)。
インデックス投資と比べると個別銘柄・特定ETFへの集中リスクも生じやすいため、ご自身のリスク許容度に合わせた判断が必要です。インデックス投資の基礎についてはインデックス投資の始め方完全ガイドもあわせてご覧ください。
権利確定日と配当受取タイミング
配当を受け取るには「権利確定日」に株主名簿に載っている必要があります。株式を購入してから受け取り資格が得られるまでには「権利付最終日」というタイミングがあり、その翌営業日(権利落ち日)以降に購入しても直近の配当は受け取れません。
日本株は3月・9月に権利確定が集中する銘柄が多く、米国株は四半期ごと(年4回)に配当を支払う企業が一般的です。複数の銘柄を組み合わせて権利確定月を分散させると、キャッシュフローが平準化されるという考え方もあります。これはあくまで一つの設計例ですので、ご自身の状況に応じてご検討ください。
株式数比例配分方式を設定しないと配当が非課税にならない
NISA口座の最大の落とし穴の一つが「配当受取方式の設定ミス」です。設定を確認していない方は、ここを必ずチェックしてください。
3種類の受取方式とNISA非課税の可否
配当の受取方式には主に3種類あります。NISA口座の非課税メリットが適用されるのは、そのうちの1つだけです(2026年4月時点、出典:日本証券業協会 NISA口座の配当金等の非課税について)。
| 受取方式 | 配当の受取先 | NISA非課税の適用 |
|---|---|---|
| 株式数比例配分方式 | 証券会社の口座に直接入金 | 適用される |
| 登録配当金受領口座方式 | 指定した銀行口座に入金 | 適用されない(約20.315%課税) |
| 配当金領収証方式 | 郵便局等で受取 | 適用されない(約20.315%課税) |
株式数比例配分方式を選ぶと、その証券会社で保有するすべての銘柄に一律で適用されます。銘柄ごとに方式を選び分けることはできません。
設定の手順と確認タイミング
設定変更は証券会社のマイページ(「配当金受取方法の設定」などのメニュー)から行います。権利確定日の数営業日前までに手続きを完了させる必要があり、期限は証券会社によって異なります。
複数の証券会社に口座を持っている場合、それぞれの口座ごとに設定が必要です。一方の会社で設定していても、もう一方が未設定なら、そちらの配当は課税対象になります。
NISA口座の設定全般の確認ポイントについてはNISAつみたて設定の注意点まとめも参考にしてください。
国内高配当ETF vs 米国高配当ETF — NISAでの手取りを比較する
「NISA口座に入れれば税金はゼロ」と思われがちですが、米国の高配当ETFについては注意が必要です。

米国ETFの「10%は取り戻せない」問題
代表的な米国高配当ETFとして、VYM(バンガード・米国高配当株式ETF)・HDV(iシェアーズ・コア高配当株ETF)・SPYD(SPDRポートフォリオS&P 500高配当株式ETF)の3銘柄がよく参照されます。いずれも分散が効いており認知度が高いETFですが、米国上場のためNISA口座における課税の扱いは同じです。
日米租税条約により、米国株・米国ETFの配当には米国側で10%が源泉徴収されます。通常の特定口座では、確定申告で「外国税額控除」を使うことで一部を取り戻せます。
しかしNISA口座では日本側の税がゼロなので、差し引く先がなく外国税額控除が使えません。つまり米国ETFの配当は、NISA口座で保有していても10%が差し引かれた状態が最終的な手取りになります。
例として、配当100円に対して米国で10%が源泉徴収されると手取りは90円です。NISA口座なら日本側の課税はゼロですが、90円から増やせるわけではありません。
二重課税調整制度と国内上場ETF
2020年1月以降、外国資産に投資する国内上場ETFには「分配時調整外国税相当額控除」(二重課税調整制度)が導入されました(出典:国税庁 No.5761 分配時調整外国税相当額控除)。
この制度は、ETFのファンド段階で支払った外国税分を、分配金受取時に自動調整するものです。通常の特定口座では二重課税が緩和されます。
ただし重要な注意点があります。NISA口座で国内上場ETFを保有している場合、日本側の税がゼロであるため、この二重課税調整制度の対象外となります。つまりNISA口座では、国内上場ETFでも外国税相当額が調整されない点には留意が必要です。
調整効果は銘柄・決算期によっても異なります。投資判断の前に目論見書や運用会社の開示情報をご確認ください。
以上を踏まえると、高配当ETFをNISA成長投資枠で活用する場合、「どこに上場しているか」「外国税の仕組みがどう影響するか」が手取り額に直結します。なお、全世界株やS&P500とのコア投資の選び方については全世界株 vs S&P500の選び方も参考にしてください。
配当控除の有利・不利 — 課税所得695万円が分岐点
「配当控除」を知っておくと、NISA以外の口座(特定口座など)で国内株の配当を受け取るときの確定申告方針を検討しやすくなります。

配当控除とは何か(特定口座・NISA以外の場合)
配当控除とは、国内株の配当に対して法人がすでに法人税を支払っていることを考慮し、個人の所得税を一定額軽減する制度です(出典:国税庁 No.1250 配当所得があるとき(配当控除))。
適用できるのは国内法人から受け取る配当のみです。外国株・外国ETFの配当は対象外となります。
また、NISA口座の配当は非課税のため、そもそも配当控除を使う必要がありません。配当控除は特定口座や一般口座など、課税口座で保有する国内株の配当に関する制度です。
695万円の根拠と注意事項
特定口座の国内株配当で確定申告をする場合、課税所得(配当所得を含む)が695万円以下であれば、総合課税を選ぶことで実効税率が源泉徴収税率(約20.315%)を下回る可能性があります。
課税所得695万円以下の場合の計算例(目安):所得税率20% + 住民税10% = 30.42%(復興税含む) から配当控除(所得税10% + 住民税2.8% = 12.8%)を差し引くと、実効税率は約17.6%になります。これは源泉徴収税率20.315%より低くなります。
一方、課税所得が695万円を超えると所得税率が23%(復興税含む23.483%)に上がり、配当控除を差し引いても実効税率が20.315%を上回るため、総合課税を選ぶと不利になる場合があります。
ただし、以下の点に注意が必要です。
- 2023年分の確定申告から、所得税と住民税で同じ課税方式を選ぶことが必要になりました
- 総合課税を選ぶと、健康保険料・社会保険料の計算に影響する場合があります
- 扶養控除の適用可否にも関わる場合があります
「695万円以下なら総合課税」はあくまで目安です。実際の税額はご自身の状況により異なります。確定申告の方針は税理士・ファイナンシャルプランナーにご相談ください。
コア・サテライト戦略で高配当株をどう位置づけるか
インデックスファンドをすでに積み立てている方には、「コア・サテライト戦略」という考え方が参考になる場合があります。
コア・サテライト戦略とは、資産の中心(コア)を安定したインデックスファンドで構成し、補完的な部分(サテライト)で個別株やテーマ型投資を行う設計の考え方です。高配当株・高配当ETFをサテライトとして位置づけることで、インデックス投資の複利効果を維持しながら定期的なキャッシュフローを確保するという考え方が生まれます。

「配当金は目的ではなく手段」という視点
配当金そのものを最終目標にするよりも、「投資を継続するためのキャッシュフローを確保する手段」として捉えると、設計の軸がぶれにくくなります。
コアのインデックスファンドで資産の成長(複利効果)を追いつつ、サテライトの高配当株で定期的な現金を得るという構造です。配当金を生活費の補完に使うか、再投資するかは、ライフステージや目的によって変わります。
全世界株やS&P500をコアに選ぶ際の考え方については全世界株 vs S&P500の選び方を、インデックス投資の基礎はインデックス投資の始め方完全ガイドをあわせてご覧ください。
また、NISA・iDeCoをどう組み合わせるかの三本柱設計についてはiDeCo上限引き上げシミュレーションも参考になります。
リバランスの考え方
株価の変動によってコアとサテライトの比率は自然にずれてきます。年に1回程度、全体のバランスを見直す習慣を持っておくと、当初の設計意図が維持しやすくなります。
売却してリバランスする方法もありますが、積み立て先の配分を一時的に調整する方法はコストや税負担の面で取り組みやすい場合があります。
NISA口座内で売却した場合、その分の非課税枠は翌年以降に復活しますが、当年内での再利用はできません。生涯投資枠の再利用ルールについては成長投資枠の使い方ガイドで詳しく解説しています。
まとめ — 成長投資枠で高配当株を使う前のチェックリスト
ここまでのポイントをチェックリスト形式でまとめます。「明日から確認できる」ことだけを並べています。
- 成長投資枠の上限を把握した — 年間240万円・生涯1,200万円(総枠1,800万円の内数)
- 購入予定の銘柄・ETFが対象外でないか確認した — 投資信託協会の対象商品リストで確認
- 証券会社の配当受取方式を確認した — 「株式数比例配分方式」になっていないと配当が課税対象になる
- 米国ETFの10%源泉徴収を理解した — NISAでも取り戻せない。国内外ETFの違いを把握しておく
- 自分の課税所得の水準を把握した — 695万円以下か超かで、特定口座分の配当申告方針が変わる場合がある
- コアとサテライトの役割を整理した — インデックス(コア)と高配当株(サテライト)の位置づけを明確に
- 迷ったら専門家に相談する — 税理士・ファイナンシャルプランナーへの相談を検討する
「配当金を受け取りながらNISAを活用する」設計は、制度の仕組みを正しく理解してから取り組むことで、より納得感を持って続けられます。まずは証券会社の設定画面を開き、配当受取方式を確認するところから始めてみてください。
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よくある質問
NISA成長投資枠で高配当株を買っても配当が課税されることはありますか?
株式数比例配分方式を選択していれば、NISA口座の配当は非課税です。他の受取方式(登録配当金受領口座方式・配当金領収証方式)を選んでいる場合は約20.315%が課税されます。設定を必ず確認してください。
米国高配当ETF(VYM・HDV・SPYDなど)をNISAで買うと税金はどうなりますか?
米国で10%が源泉徴収されます。通常口座では外国税額控除で一部を取り戻せますが、NISA口座では日本側の税がゼロのため控除を使えず、米国10%分は手元に戻りません。VYM・HDV・SPYDはいずれも米国上場ETFのため、この点は共通して当てはまります。
高配当株と全世界株インデックスはどちらがNISAに向きますか?
目的によって異なります。長期的な資産成長を重視するならインデックスファンド、定期的なキャッシュフローを重視するなら高配当株という整理が参考になります。どちらが「向く」かは一律に言えるものではなく、ご自身の目的・状況にあわせてご検討ください。
配当控除とは何ですか?NISAでも使えますか?
配当控除は、国内法人の配当所得に対して所得税を軽減する制度です。NISA口座の配当は非課税のため、そもそも配当控除の対象外です。特定口座等の課税口座で受け取る国内株配当に適用され、課税所得が695万円以下の場合に総合課税を選ぶと有利になる場合があります。
成長投資枠で買った株が監理銘柄になったらどうなりますか?
保有は継続できますが、新規買い付けはできなくなります。投資信託協会の対象商品リストを定期的に確認することをおすすめします。
高配当株の配当利回りが高すぎる場合は問題がありますか?
株価下落により見かけ上の利回りが高くなっている場合(いわゆる「罠配当」)があるとされています。利回りだけでなく、企業業績・配当性向・IRをあわせて確認することが大切とされています。
コア・サテライト戦略の比率はどう決めればいいですか?
ライフステージ・収入・目標によって異なり、一律の正解はありません。資産全体のバランスと目的に応じてご自身で判断するか、ファイナンシャルプランナーにご相談ください。
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